研究概要 |
京都大学医学部附属動物実験施設のKyo:Wistarラットコロニーにみつけられた振戦発症ミュータントであるtremorラットと西ドイツのDr.Rehmからゆずりうけた別の振戦ミュータントであるzitterラットを交配することによって自然発症てんかんラット(SER)を作出した. このラットはそれぞれのミュータント遺伝子であるtremor(tm)とzitter(zi)を共にホモにもつ二重突然変異体である. 本研究の目的はSERの維持, 繁殖方法を確立すること, ならびにSERの特性を評価することによって, てんかんモデルとしての有用性を明らかにすることにある. 得られた主要な成績を列挙すると以下の通りである. 1.SERをSPF化することに成功し, 計画的に生産できるコロニーを作成した. 2.近交化を進めた系はF10代に達した. 3.zitter遺伝子はラット染色体第IV連関群のHao-1に9cM離れて連鎖していた. 4.SERは強直性けいれんに加えて, 脳波上5〜7Hzの棘徐波結合を伴なう欠神様発作を自然発症していた. 5.tremorラットもまたSERと同様に欠神様発作をもっていた. 6.既存の抗てんかん薬の単回投与試験において, SERおよびtremorラットのてんかん様発作は特異的に抑制された. すなわち, トリメタジオンとエトサキシミドは欠神様発作のみを抑制し, フェニトインは強直性けいれんのみを抑制し, さらにフェノバルビタールとバルプロ酸は両方の発作を抑制した. 7.代表的な抗てんかん薬であるフェノバルビタールを飼料に0.1%混入して持続投与すると, 強直性けいれんの抑制効果とともに体重の増加, 生存期間の延長効果を認めた. 以上の結果から, 我々はSERとtremorラットはヒトてんかんの有益な動物モデルであると結論した.
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