研究概要 |
肝炎発症ラットの肝炎発症原因を研究するため, 肝の代謝酵素の一つであるグルタチオンS転移酵素(GST)について検討した. これは肝炎とGSTとの関連の強いことが知られているからである. しかしGSTは10種類ほどの分子種からなるアイソザイムであり, 肝炎時にどのような分子種が発現するかを知ることは肝炎の発生機構を考える上で重要である. 1.生化学的解析: 正常ラット肝及び肝炎ラット肝よりGSTを精製分離した. これら分子種に対するモノクロナル抗体, ポリクロナル抗体を作成した. この過程で以下の特徴を観察した. (1)クロマトフォーカシングでのGST分離パターンから, 肝炎ラットにおけるGST2-2の異常な発現の増大とGST1-1の減少が認められた. 正常ラットにおいてはGST2-2はごく小量しか存在しておらず, またGST1-1は十分量存在している. 即ちこのふたつの遺伝子の発現様式が肝炎ラットにおいて完全に逆転していた. (2)Western blotによる解析で, 肝炎ラットのクルードな肝上清においてもGST2-2が増大していることが確認された. さらにGST4-4の顕著な増大が判明した. 2.免疫組織化学的解析 (1)GST2-2は小増殖巣と肝周囲全体に分布していた. (2)GST4-4は小増殖巣には認められず, 肝細胞全体に分布していた. 以上のことから肝炎ラットの肝GSTの発現異常は明らかである. しかしこれらの現象が肝炎発症とどう関連しているのか, それとも遺伝的要因によるものなのかは今後の問題として残された. 現在その遺伝解析を進行中である.
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