研究概要 |
PMSG誘起連続発情ラットの成立要因, 連続発情時の内分泌学的特性, 治療法の確立並びに性周期回帰機構への応用を目的として種々の処置による性周期回帰の回復が可能か否かを検討した. PMSG投与による連続発情誘起機序の成立要因を明らかにするために, PMSG投与直後のゴナドトロピン及びステロイドホルモン分泌変化を調べた. PMSG投与に伴いLH分泌の上昇, FSH分泌の低下が招来されてLH/FSH比が上昇した. ステロイドホルモン分泌はPMSG投与直後からテストステロンが増加し始めてday2〜3にかけて急増した. エストラジオール分泌もday2からday3にかけて極めて高値になった. 連続発情時のゴナドトロピン分泌は対照群に比べてLH濃度が低く, FSH濃度が高かった. 卵巣摘出後のLH, FSH分泌のネガティブフィードバック機構にも反応遅延及び反応低下がみられた. PMSG連続発情ラットに対して種々の処置を試みたところ, 雄との1週間の同居では交尾行動がみられなかった. 更に, 子宮頚管の刺激によっても連続発情状態が中断されず性周期回帰の回復がみられなかった. しかし, 絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)及びプロジェステロン投与により, 排卵が誘起されて性周期回帰の回復がみられた. 以上から, PMSG投与により多数の卵胞の発育が促進され, 同時に招来されたホルモンの不均衡が排卵のためのLHサージの分泌を障害して連続発情をもたらし, それが持続するものと考えられる. この連続発情ラットでは, 交尾行動に関連する中枢性の障害が考えられるが, 適切な処置により性周期回帰の回復が〓られることから, この連続発情は可逆的現象であることが明らかになった. 人の多嚢胞卵巣症候群の動物モデルとしてこのPMSG連続発情ラットの応用が考えられる.
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