研究概要 |
タバコネクロシスウイルス(TNV)は粒状をしたRNAウイルスであり, アカザ, ナス, マメ, ユリ科等の植物に感染し, えそ症状を起させる. TNVは分子量約30Kの蛋白サブユニットが180個集合して(T=3)ウイルス殻を形成している. 我々はTNVをC.quinoaを用いれ増殖させ, 病葉から分画遠心, ゲルロ過等の操作で精製した. 精製標品はSDS-電気泳動で単一のバンドを示し, 電子顕微鏡では直径約28mmの粒子を観察することができた. 精製ウイルス溶液を透析法で結晶化した. 400mMリン酸緩衝液(P.H.6.0)に対して透析することにより, 約1週間で菱形十二面体状の結晶が析出した. 結晶は大きいものでは1mmにまで成長した. この結晶のX線回析パターンから, この結晶は立方晶系, 空間群P4232, 格子定数a=338A2F2であることがわかった. 単位格子中にTNV粒子が2個含まれ, それぞれは単位格子の(0, 0, 0)と(1/2, 1/2, 1/2)に位置している. それぞれの粒子は, 粒子の23と結晶の23とが一致するような配向をしており, お互いに90°回転している. このパッキングから粒子間距離は293A2F2と計算され, 電子顕微鏡で観察されている粒子径と対応している. このTNV結晶は2.5A2F2分解能というウイルス結晶としては非常に高分解能までの回析を与える. しかもX線照射に対して損傷が少なく, 高分解能解析に適した結晶である. 現在, 振動写真法によるnative結晶の強度測定および重原子同型買換体の検索を行っている.
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