研究概要 |
大環状ヘテロシクロファンN,NI,NII,NIII-テトラメチルー2,11,20,29-テトラアザ[3.3.3.3]パラシクロハァン(1)のベンゼン, ピリジン, ブロムクロルメタンとの包接体および1自身さらに1を4級化した水溶性シクロファンのX線結晶構造解析をした. 包接体の結晶はゲスト依存性の多形を示し, 以前の結果も加えると5種類に分類される. 1・ベンゼン(P2_1,Z=4), 1・ピリジン(P1,Z=1),1・クロロホルム(C2,Z=2),1・アセトニトリル,1・2酸化炭素(C2/C,Z=4),1・ジクロロメタン,1・ブロモクロルメタン(C2/C,Z=8),1は溶液中ではアキラルであるが包接体結晶中では環構造が凍結されキラリティーを持つ. どの包接体でも1はb軸方向に重なって包接カラムを形成し, カラム中にゲスト分子を包接する. 一本のカラムは同じキラリティーを持つ1からなるのでキラリティーを持つ. キラルな空間群の場合同じキラリティーを持つカラムの集合からなり, アキラルな空間群は反対のキラリティーを持つカラムの集合からなる. 5種類の結晶構造は互いに密接な関係があり, カラムの配置の様式による. またカラムの配置は包接されるゲスト分子による1のベンゼン環の傾きに大きく依存する. 1自身の結晶解析から包接体中の1の構造(C_4)とは異なるC_<2v>対称を持つ環構造を見出した. 力場計算によるとC_4とC_<2v>のエネルギー差は2.3kcal/molである. 1の配座解析によると, 1は対掌体も含めて6個の構造の間を相互交換しており, 配座間の最大エネルギー差は2.3kcal/molであることがわかった. また配座交換に際してのエネルギー障壁と遷移状態を求めた. 1の包接体は他のガス状のゲスト分子と接触させると相転移を伴うゲスト交換が起る. 最初交換率40〜50%に到るゆるやかな交換過程と続いて起る相転移とこれに伴う急激なガス交換(90%)からなる. 現在この機構を検討中である.
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