研究概要 |
ラフニング転移(Roughening Transition)は固体表面の相転移の問題として, 1951年 Bucton Cabrena and Frankによって理論的に予想されて知られるようになってから, 実験的に検証が多く試みられ固体物性の基本的な研究の一つに挙げられているものである. ラフニング転移に関した統計力学的理論計算が進み, 結晶の表面自由エネルギー密度(表面張力), 結晶の平衡形のファセット転移との対応がつけられてき, 実験的検証が可能になってきた. 一方, 電子・イオン混合超イオン導電体α-Ag_2Sとα-Ag_2Seは銀原子化学拡散係数が大きく, 実験的に数mmの大きい結晶の熱平衡形に近い単結晶を得ることができることが出来る. 〔LLO〕, 〔LOO〕ファセット面積の熱平衡の温度変化を観測することによってラフニング転移温度の決定, 熱平衡形のファセット近傍の形より表面自由エネルギー密度の方位依存性の決定を実験的に行うことを目的として研究を行った. 研究は 熱平衡条件が実現する条件の検討 ファセット面積変化の測定 ファセット近傍の形状の観察と解析 の3つに分けて行った. 熱平衡条件からのずれの第一原因は炉の温度分布の不均一にあり, 将来の問題として実験系を小さくすることによって改良できる見通しが出ている. ファセット面積の温度変化よりラフニング温度を求めたが, 温度以外に平衡にある硫黄蒸気によって変化することが明らかとなり, 今後の実験条件の改良が必要である. ファセット近傍の形状より表面自由エネルギー密度の方位依存性を求める方式は確立することができ, 今後の実験条件の変化に対応した平衡形に対して利用できよう.
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