研究概要 |
動作中の被服圧の変化を動的にとらえ, かつ人体各部位での被服圧分布や動作による変形部分での被服圧分布を同時に測定できる装置を, 前年度に試作した. 本年度においては, (A)標準スラックスを着用し, 片脚上挙下挙, 踏台昇降, 椅座位, しゃがみこみの動作を行ったときの膝部および臀部での被服圧分布の変化を測定するとともに, (B)素材およびゆとり量を変化したスラックスを着用し, 片脚上挙下挙, 椅座位, の動作を行ったときの膝部での被服圧分布を測定した. (A)の実験において, (1)いずれの動作においても, 被服圧は動作の途中で最大値を示し, 姿勢を変化し静止した時点ではその最大値より低下し, ほぼ一定の値を示す. (2)被服圧の動作による違いは, 膝部においては膝の屈曲の程度の大きい動作ほど被服圧が大きく, しゃがみこみ>椅座位>片脚上挙下挙・踏台昇降である. 臀部の被服圧は膝部よりかなり小さいが, 同様にしゃがみこみが最も大きい. (3)スラックスと皮膚がずれないように, スラックスの裾を足首に固定した場合の被服圧は, 固定しない場合よりかなり大きい. (4)膝部, 臀部における被服圧分布は動作やスラックスの状態によって異なるが, 同じ膝部でも位置によりかなり被服圧が異なっていることがわかった. (B)の実験において, 素材およびゆとり量の違いにより被服圧は有意な差を示し, 伸度の小さい素材のスラックスほど, ゆとり量の小さいスラックスほど被服圧は大きい結果となった. 現在までの被服圧の研究はある姿勢で一定となった被服圧値を測定しているが, 本研究において試作した装置による被服圧測定の結果から, 被服圧の動的測定の重要性が明らかとなった. また, 被服圧分布は動作の種類やスラックスの種類, 状態によって異なることがわかった. 従って, 動作やスラックスによる被服圧の違いを検討する場合は, ある1つの位置又は少ないポイントで被服圧を比較するのではなく, 被服圧分布を検討する必要がある.
|