研究概要 |
本研究は, 布の立体成型技法であるいせこみの定量的評価方法の基準化を目的として, いせこみ操作の機械化および座屈変形量の測定方法について検討すると共に, 変形量と力学特性との関係について検討した. また, 縫い目じわに対する主観的評価基準と変形量との関係を明らかにすることを試み, 以下のような知見を得た. いせこみ操作の機械化は, 差動上下送り機構および前後差動送り歯機構を有するミシンの利用を試みた. 双方の機構はともに差動量が少であるとき, いせこみとして有効であることが確認されたが, 差動量といせこみ率との関係は, 布の特性, 布目方向により異なるだけでなく, 同一差動量においても変動があり, 再現性の点で考慮を要する事がわかった. 従って, 差動量をいせこみ率の指標とすることは適さないと考える. いせこみによる変形量の測定は, 局部的な変形である縫い目じわについては触針式測定器を試作し, 測定した凹凸度曲線の平均高さおよびその変動係数, 凹凸のピーク数を指標として検討した. その結果, いせこみ率の増加に伴い, 平均高さ, ピーク数は, あるいせこみ率までは増加するが, 一後平衡となり, 変動係数は変化がなかった. 今後, 個々のしわ形状について詳細に検討し, しわの印象と適合する評価指標を見出すことにより, 主観的評価基準と変形量との関係をさらに明確にしたいと考える. 全面的座屈である形成曲面は, モアレ法と曲面測定装置で測定し, 曲面の最大高さおよび曲面の変極点の位置を指標として評価した. その結果, 力学特性と曲面形成性との関係は, 45度バイアス方向では, 防しわ性が低く, 剛軟度, 座屈抵抗力, 曲げ応力, 初期弾性が大なものほど変極点の位置はいせこみ縫い目より離れ, 最大高さも高くなることがわかった.
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