研究概要 |
近年, 婦人の就労の増加に伴い, 短時間で調理のできる電子レンジ及びまとめ買いのできる冷凍食品は家庭に広く普及している. しかし, 電子レンジ及びまとめ買いのできる冷凍食品は家庭に広く普及している. しかし, 電子レンジによる冷凍食品の解凍は技術的にむずかしくあまり行われていない. 本研究は蛋白源として日本人に古くから親しまれてきた魚を試料とし, 品質の良い解凍魚を得るために必要な電子レンジの操作条件を確立することを目的とした. 材料として漁獲後2日以内に-60°Cで凍結し, -40°C以下に貯蔵した冷凍メバチマグロを用い, 12×5×1.5cm(約100g)に成形し, 解凍時まで-28.3°Cで貯蔵し試料とした. 赤外線センサーによる表面温度測定装置及び照射強度制御装置を付置した電子レンジを用いて, 試料1回を0.5〜25分間解凍し, 試料表面の温度変化を目記させた. 解凍条件の判定は局部的な煮熟状態の出現及び試料の収縮または変形の程度により行った. 刺身の官能評価は, 色, テクスチャー及び総合的好ましさに対する2点嗜好試験法変法によった. また, テクスチュロトーターによる硬さ及び凝集性, 針入度計による針入度, 遠心分離による保水性, 自由ドリップ量, pH及びK値(生鮮度試験紙法)により品質を評価した. 刺身に生じる局部的な煮熟は試料表面温度-3°Cで電子レンジ解凍を終了することにより防止できた. この温度は刺身に包丁が入れられる温度であった. 一方, 刺身の収縮及び変形は, 表面温度-3°Cまでの解凍では試料の55%に見られたが, 表面温度-11°Cまで加温した後, 照射強度を約1/60とし-3°Cで終了することで25%に減少させることができた. これにより解凍時間は自然解凍の1/9以下に短縮された. 最も良い成績の得られた条件で電子レンジ解凍した刺身について, 4°C自然解凍刺身を対照として官能検査を行い, あわせて物性測定を行った. その結果, 針入度, 保水性, 硬さの測定値は自然解凍に比べ電子レンジ解凍刺身が有意に高かったが, 官能検査の結果は両者有意差なく好まれた.
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