研究概要 |
卵黄の加工特性のうち泡立ち性と熱凝固性について, その構成タンパク質成分の機能特性との関連をも含めて研究を行い, つぎのような結果を得た. 1.卵黄より調製したグラニュールはNacl0.3M以上で溶解し, 泡立ち性を示した. 既報の低密度リポタンパク質(LDL)に比べ, 起泡力は低いが泡沫安定性は高かった. またpH4以下で沈澱を生じて泡立ち性が消失した. 卵黄の泡立ち性は, グラニュールよりLDLの泡立ち性に類似していた. 2.砂糖, ゼラチンは添加量および起泡温度によっては卵黄の起泡力を低下させずに安定性を高めたが, 添加量が多くなると起泡力を低下させ, 特にゼラチンでは低下が著しかった. 牛乳添加も起泡力を低下させたが, 起泡温度や添加後の経過時間による差が大きかった. 卵黄の泡立ち性の特徴として, かなり多量の油を乳化しながら泡立つことが認められた. 3.全卵の泡立ち性は卵白より卵黄に似ており, また卵白の起泡力は卵黄の混入により低下するが, 卵黄の起泡力は卵白が混入しても低下せず, 安定性はむしろよくなるなどのことから, 全卵の起泡力は主として卵黄によるものであり, 卵白は安定性を高めるのに役立っていると推察した. 4.卵黄タンパク質成分のうち, r-リベチンの凝固力は極めて小さかった. グラニュールの凝固力は塩濃度による影響を強く受け, Nacl1.0〜2.5%の間で急激に増加したが, LDLの凝固力に対する塩濃度の影響は小さかった. 卵黄は1.5%添加で凝固力が増大した. 各試料の凝固力のpHによる変化は塩濃度によって異なり, 卵黄の凝固力はNacl無添加の場合はLDLと, 2%添加の場合はグラニュールとそれぞれ似た変化を示した. 今後は, 卵黄および各構成タンパク質成分の非加熱状態でのゲル化に対する塩, pH, 糖の影響, 凝固性における各種タンパク質の相互作用などについて研究を進める予定である.
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