研究概要 |
小麦粉製品の膨化に関して, 昔から伝統的に酵母以外の微生物と考えられるものが, 中国・東南アジアそして日本の一部で用いられてきた. 特にこのような微生物は中国料理の蒸し物に用いられ秘伝とされているが, 聴聞により発麺(スターター)を調製し, 饅頭を作ることが可能となった. 1.発麺とパン酵母を用いて饅頭を作り, 官能検査をした結果, 有意差はなかった. とくに発麺を用いた饅頭は酵母臭がないものであった. 2.発麺中に存在する微生物群を純粋分離し, 数株の細菌を単離した. その微生物は, Enterobacter cloacae GAOと同定した. 3.Enterobacteriaceae微生物は, Enterotoxinを産出するとの報告がある. そのため, Ent.cloacae GAO菌とATCC 13047菌のAPIバイオタイプを測定すると, 共に3305573であった. 耐熱性Enterotoxin産生株のAPIバイオタイプは, 3305763であり, 分離したEnt.cloacae GAO菌とATCC 13047菌のAPIバイオタイプとは異なるものであった. 4.バルブ系ヌードマウスに濃縮懸濁液を投与した場合, 腹腔内注射およびゾンデによる経口投与の場合, いずれも臓器の重量には影響が認められなかった. また内臓所見や下痢などの観察を行ったが異常所見は認められなかった. これはウスター系ラットを用いた実験においても同様の結果であった. このことよりEnt.cloacae GAO菌とその培養液には, 感染性はなく, また内臓重量および内臓所見等からみて, Enterotoxin様物質の産生は考えられなかった.
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