研究概要 |
ヤシ油, パーム核油等のラウリン酸型油脂を一般食用油脂である非ラウリン酸型油脂と混合して用いると, 揚げ過程において特有の持続的泡立ちを生ずる. 本研究では, この泡立ちのメカニズムを明らかにすると共に, 併せてエステル交換油の熱安定性を明らかにした. 1.食用油脂としてヤシ油, パーム核油, 大豆油, トウモロコシ油, 米ヌカ油, ナタネ油, 綿実油, パーム油, ラードを用いた. 2種の油脂を1:1で混合して180°Cに加熱し, 揚げ種を入れた時に生ずる泡立ちを比較すると, ヤシ油またはパーム核油と他の油脂を混合した時, 激しい特有の持続的泡立ちが観察された. 泡立ちの高い混合油を80°C, 30分間のランダム型エステル交換を行って, 油脂酸組成は同じであるがトリアシルグルリセロール組成を異にするエステル交換油を調製して, その泡立ちを測定したところ, エステル交換後の泡立ちは著しく減少した. さらに, 中鎖酸系としてC8〜C12, 長鎖酸系としてC16〜C18の単一トリアシルグリセロールを用い, 上記と同様に組合せを変えて, 混合油とエステル交換油の泡立ちを調べた. 中鎖酸系と長鎖酸系の混合油では顕著な泡立ちを生じたが, 他の組合せの混合油あるいはエステル交換油では泡立ちはほとんど観察されなかった. 以上の結果からヤシ油等を一般食用油脂と混合した時に起る特徴的な持続性泡立ちは, 単に脂肪酸組成によって支配されるのではなく, トリアシルグリセロール分子サイズの不均衡によるものであることを明らかにした. 2.エステル交換油の熱酸化安定性を, A_<232>, 過酸化価物, カルボニル価, 酸価, 脂肪酸組成, 屈折率で測定して混合油の値と比較した. その結果, 不飽和酸含量が高い程劣化度が高くなるほか, 混合油とエステル交換油ではほとんど差がなかった. ただし屈折率の増加はエステル交換油の方が大きく, 重合し易い分子種の生成が示唆された.
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