研究概要 |
1.砂糖添加した澱粉の糊化:0〜200%の広範囲の砂糖水中で, 砂糖濃度の増加と共に, 澱粉の糊化反応は高温側に移動した. 20%乾量澱粉では糊化開始温度Ts, ピーク温度Tp, 終了温度Tcは, 砂糖(g)/水(g)X%に対して To(Tp,Tc)=0.22X+52(60,71)゜C; 但しr=0.995 の直線関係が成立つ. 糖濃度0→200%に対してTs, Tp, Tcが44゜C高温側に移動する. 糊化吸熱帶の形状は変らない. 天然澱粉粒(含水量約15%)が糖液中に分散している場合, 糖が水との結合によって, 澱粉粒表面から水が内部に入ることを抑制していると考えられた. 2.砂糖添加した糊化澱粉の老化:老化後の再糊化吸熱スペクトルは糊化吸熱スペクトルと全く異り, 約35゜Cから再糊化が開始する. 再糊化反応は, 澱粉-砂糖-水系の糊化転移であり, 加工食品保存の立場からは老化後の熱スペクトルのデータの集積が必要である. 一方, 糊化反応を顕著に抑制する天然澱粉粒表面の砂糖水中での安定構造は, 今後の検討課題であると考えられた. 3.糊化澱粉の冷凍:冷凍直後から0゜Cで融解する水と, 自由水より相互の結合がゆるく-5゜C附近で融解する水が生じる. -18゜Cで保存しても水は易動度を示し, -5゜Cで液化する水は徐々に増し, 1ヶ月保存すると自由水の約10%程度にまで増加する. 凍結初期段階には-5゜Cの吸熱帶は自由水の吸熱帶とはっきり分離しているので, 凍結温度における水の動きを知るのに熱分析は敏感な手段を提供する.
|