研究概要 |
我が国の衣料用洗剤のほとんどが水不溶性物質のNa-ゼオライトを配合した無リン洗剤である. Na-ゼオライトは洗濯用水中の硬度成分とイオン交換をして置換ゼオライトを生ずるが, この置換ゼオライトが布に付着した際の影響に関する研究はなされていない. 本研究では, 置換ゼオライトの布への付着性を明らかにすると共に, 実用的立場から白色粒子のゼオライトが染色布に付着した場合の外観変化について検討した. その結果, 浴組成の異なる分散液中における各種ゼオライトの平均粒子径を遠心沈降式粒度分布測定装置により測定したところ, Mg-ゼオライト>Ca-ゼオライト>Na-ゼオライト であった. また, 硬水中(0〜30°DH)におけるNa-ゼオライト粒子径はCa硬水中よりMg硬水中において著しく大きいことが確認された. また, 界面活性剤(LAS,AOS)の添加により平均粒子径は若干小さくなった. 置換ゼオライトの布への付着順位は, 分散液中の平均粒子径とよく一致し, 凝集粒子径が大きい程, 布への付着量も多くなることが原子吸光分析による定量値より確認された. また, 明度の異なる4色(赤, 青, 黄, 黒)の染色布を準備し, 1色につき10段階のゼオライト付着量の異なる汚染布を調製した. この試料布の官能調査(一対比較による採点法)による評価結果と, ゼオライト付着量の定量値の結果より, 染色布に付着しているゼオライトを「わずかに白い」と識別しうるゼオライトの限界値は, 本実験の濃色布において布1g当り6〜7mgであった. 淡色布は更に付着していないと識別しえない. 従って, 無リン洗剤を用いたくり返し家庭洗濯によるNa-ゼオライト付着量値1.6mg/gは, 肉眼では識別できない. しかし, 硬水中では置換ゼオライトの生成により識別されうる付着があると考えられる.
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