研究概要 |
身体障害者・寝たきり老人の寝具を検討する目的で, 睡眠中の体動を指標として各種実験を行ったところ, 以下のような知見が得られた. 1)ポリエステル凸凹パット, ポリウレタン製波型マット, 磁気入ヘルスパットの3種の寝具の快適性は, ポリエステル凸凹パット>ポリウレタン製波型マット>磁気入ヘルスパットの順に評価が高い結果となった. 表面形状を凸凹にして体圧分散をねらう場合, 出来るだけ吸湿性が高い素材が使用されることが望ましい. 2)寝たきり老人を対象とした調査において, 被験者の床ずれ予測スコアーは1.65〜14.50の範囲となり, 基準値(0.73)より高い結果となった. しかし, いずれの老人にも床ずれの発生は認められず, 床ずれ予防における看護の大切さを確認した. 3)寝たきり老人の場合, 1時間あたりの体動数は, 日中6.5回:夜間3.9回平均静止時間は, 日中13.5分:夜間28.5分, 最大静止時間は, 日中51.6分:夜間131.0分となった. 又, 日中および夜間の相関は, 平均静止時間について有意性が認められた(γ=0.587, P<0.05). 床ずれの発生と関連をもつと思われる最大静止時間は, 夜間120分以上を示す老人がみられ, 体圧分散を目的とした寝具の工夫が必要と思われた. 4)上記3)の実験値と, 成人女性を対象とした同季の夜間睡眠の実験値を比較すると, 1時間あたりの体動数は成人の方が多く, 平均静止時間および最大静止時間は老人の方が長い結果となった. 1時間あたりの体動数は, 個人差の大きい項目であるが, その平均値は, 成人5.5回, 老人3.9回となり, 両者の間に有意性は認められなかった. 5)体動と寝床内温湿度の間には, 明らかな関係は認められなかった.
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