旧日本軍の生物兵器部隊である満州第731部隊の活動と、その部隊の医学研究上の成果が戦後どのようにアメリカに渡ったかを、文献に基づいて立証することが本研究の目的である。本年度においては1945年から1950年までの間の、アメリカ人研究者の論文およびアメリカの公文書の収集を主に行なった。アメリカ人研究者の多くはアメリカの生物兵器研究機関、キャンプ・デトリックの所属であり、そのピック・アップの作業に意外に時間を取られてしまった。他方、公文書の収集については、ある程度までは近年、アメリカ公文書館から日本の国会図書館に移されたマイクロフィルムおよびマイクロフィルムにより効果的に資料収集を行なうことができた。 戦犯負責と引き換えによる「取り引き」後、アメリカ側に渡り、発展した研究として、現在「流行性出血熱」の研究について分析を加えている。この分析を通じて、朝鮮戦争における生物兵器史用の有無について結論を出せるのではないかと考えている。 今度から初めたこの研究の成果は、1988年にカリフォルニア大学で開催される、第5回国際中国科学史会議における招待講演として発表される予定である。なお本年度については特に記すべき成果は公表していない。
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