研究概要 |
テニスのネットプレーにおける予測に及ぼす知覚的トレーニングの効果を検討するために2つの実験を行った. 結果は次のとおりである. 1.相手パッサーの打球予測に及ぼす知覚的トレーニングの効果(実験1) トレーニング前の予測テストにおいて, 初級者(経験1年)は, -6フィルム(インパクト6コマ前で見えなくなる)で50%, -4で58%, -2で66%, 0で68%の正答率を示した. この値は上級者の68〜95%の値よりも有意に劣っていた. 眼球運動を測定した結果, 上級者もラケットとボールを注視していたが, この他上級者はパッサーの肩を, 初級者は足を注視していた. 初級者のうち, フィルムの続きを見せてトレーニングを行ったKR群は, トレーニング後, 60〜79%の正答率を示した. 教示・KRを与えてトレーニングを行った教示群は, KR群よりも有意に高い70〜87%の正答率を示した. なお, KR群の注視点には変化が見られなかったが, 教示群にはパッサーの足よりも肩を注視するという有意な変化が認められた. 2.パッサーの打球に対する反応時間に及ぼすトレーニングの効果(実験2) 反応時間(RT)テストにおいて, 上級者は+8フィルム(ボールの行方が見える)で264msec, 0フィルム(インパクトまで)で241msecであった. 中級者(経験3年以上), 初級者(経験3年未満)のいずれも, トレーニング前のRTは上級者よりも有意に遅かった. しかし, 教示・KRを与えてトレーニングを行った後のテストでは, いずれのRTも有意に短縮した. トレーニング後の中級者のRTは+8で161msec, 0で149msecであり, 上級者よりも有意に早くなった. 初級者のRTは218msec, 188msecであり, 中級者よりは有意に遅いが上級者の値を上回っていた. これらの結果から, フィルムを用いて行う知覚的トレーニングが, パッサーの打球予測および反応時間の向上に有効であることが示唆された.
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