研究概要 |
本研究の一番大きな目的は, 態度測定における質問紙調査法の問題点をふまえて, それを補うことのできる方法論の開発であった. すでに作成した質問紙による行動規範尺度を参考にして, 軟式テニスでよくおこるスポーツマンシップが問題にされる状況を設定し, 映像化による尺度を作成する試みを行った. 初年度はビデオ映像を作成する作業を行い, 予備的な映像尺度ができあがった. 今年度は, それを用いて尺度の信頼性・妥当性を高めながら, 行動規範を規定する要因の分析を行う予定であったが, その映像をさらに手を加えることに時間と労力が費やされ, 最終的に質問紙と併用した約20分程度の軟式テニスにおける行動規範の映像化尺度が作成された. 予備的に, 中学軟式テニス部員103名を対象として, 調査測定の可能性について検討するために映像をみせながら質問紙に回答させた. その結果, 映像化された10の事例は, その状況がほとんど理解できるものであり, より生きた映像で示されるためわかりやすく, 質問紙だけの反応とは異なると考えられる. この点については, 方法論による反応傾向をみておく必要がある. 今回は, 本調査として中学生のみを対象として, 男女あわせて304名の軟式テニス部員を測定した. テレビモニターで測定を実施するため, 場所ならびに人数の制約があり, 当初予定していた600名を大幅に下回った. 従って, 性別, 経験年数別, ポジション別, 目的志向別, 競技水準別などの個人的要因について, その傾向性をみるだけにした. 今後, 高校生, 大学生への測定計画を予定しており, 多くのサンプルを収集した上で標準化の手続きや要因分析を進めていきたい. ただ今回の収穫として, 新しい測定法の開発だけでなく, つくられた映像そのものがひとつのスポーツ教育の教材として機能することが示唆された. 映像に説得的コミュニケーションを入れることによる行動規範の変容も課題にしていきたい.
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