研究概要 |
運動時の消化管機能とくに胃分泌,胃排出および胃 小腸運動について、イヌを用いて検討した。 1.胃分泌 胃瘻 ハイデンハイン小胃を造設した雑種成犬4頭を用いた。肉の缶詰を食べさせた後、トレッドミル上を2,4または6km/hで歩行させて、ハイデンハイン小胃からの胃分泌を測定した。10分毎の酸排出量を検討すると、運動開始後60分まではいずれの歩行速度でも有意な変化がなかった。しかし、4km/hの速度では80分から110分まで、6km/hの速度では70分から120分まで、酸排出量が有意に抑制された。全身運動は胃分泌を抑制するとも影響がないともいわれているが、今回の実験から1時間以内の運動は影響がなく。1時間を越える運動が胃分泌を抑制することがわかった。 2.胃排出 胃瘻 十二指腸瘻を造設した雑種成犬4頭を用いた。胃排出はサスタジェン100g(蛋白質23.5%,脂肪3.5%,炭水化物66.5%,総エネルギー390カロリー)と非吸収性のマーカーであるポリエチレングリコール(PEG4000)1.5gを微温湯300mlに溶かして胃瘻から注入し、6km/hでトレッドミル上を走らせながら15,30,45,60,90,120分目に胃瘻を開放し、胃内に残っているPEGの量から胃排出を推定した。全身運動は胃排出に影響を与えなかった。 3.胃,小腸運動 胃排出の実験に使用したイヌのうち2頭を用いた。胃,十二指腸瘻を開放してマイクロチップトランスデューサ(ミラー,USA)を胃内へは1〜2cm,十二指腸へは5cmおよび30cm肛側に先端を留置した。空腹時の周期的収縮を観擦し20分後に6km/hでトレッドミル上を走らせた。安静時には100分毎に出現する周期的収縮が運動中出現しなかった。運動を中止して50分目,運動前の周期的収縮から200分目に強い収縮が出現した。全身運動は胃,小腸運動を抑制した。
|