研究概要 |
32週間にわたる長期水泳訓練を実施し, 喘息児の運動中の酸素摂取量及び血液性状を測定し, 水泳が彼等の体力づくり, 体質改善に有効であるかどうかを確認する事を目的とした. 被検者は, 7〜11歳の男児喘息児11名(軽症7名, 中・重症4名)と対照群として健常男児(7〜11歳)6名である. 水泳訓練は, 32週間(週2回, 各1.5時間)にわたり, 温水プールにおいて実施した. 測定項目は, 安静時・運動負荷直後及び運動負荷10分後の血液性状, 免疫グロブリンIgE値, HR及び酸素摂取量である. 結果(1)喘息児の免疫グロブリンEの平均は, 984.5IU/ml(±291.6)であったが, 32週後には461.0IU/ml(±212.2)へと半減していた. (2)血清脂質のうちNEFAやトリグリセライドの値が, 健常児に比べてそれぞれ有意に高かった(P<0.05). しかし, 32週後には両者の間に有意差は認められなくなっていた. (3)安静時乳酸の値も, 健常児(8.25±1.89mg/dl)に比べて有意に高く(12.38±3.95mg/dl), 運動10分後においても健常児13.55mg/dl(±3.45)に対して, 喘息児のそれは, 21.74mg/dl(±12.31)と大きな差が認められた. しかし, 32週後には有意に低下し, 健常児の値と差が認められなくなった. (4)安静時酸素摂取量は, 喘息児6.69ml/min・Kg(±1.62), 健常児2.59ml/min・Kg(±0.53)であり, 両者の間に有意差が認められた(P<0.01). 運動負荷10分後においても7.91ml/min・Kg(±3.39)を示し, 健常児(2.78ml/min・Kg)との間に差が認められた. しかし, 32週後には安静時, 運動負荷10分後ともに有意に低下していた. 以上長期にわたる水泳訓練は, 喘息児にとって有効な体力づくりとなるであろう.
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