研究概要 |
丁度よい速度, いわゆるPreferred Tempoは個人に固有で安定したものであるといわれるが, 本研究はまだ十分に明らかにされていない年齢の推移や運動負荷に伴う変化特性, および光や刺激頻度に対するPreferred Tempoについて実験調査を試み, 次の知見を得た. 1. 手指の動作(拍手又は打鍵)および歩行動作によるPreferred Tempoは幼児で平均125回/分と140回/分であったが, 加齢と共に減少してゆき老人のテンポいずれも100回/分に集約される傾向にある. また女子大学生のみの結果であるが, 手指・歩行動作ともに日内変動が認められ, 体温上昇期(5時P.M.)にこのPreferred Tempoは増大した. さらに, 音刺激によっても変化する傾向にあり, 殊にNOISE刺激によって増大するという興味ある結果を得た. 相互作用場面では, 幼児の場合は競争的なふん囲気になり, 動作の速度は増大するが, 女子大学生の場合は逆に減少する傾向がみられた. 2. 運動負荷に伴う変化については, トレッドミル走, 踏台昇降, エアロビクスダンス等により, RMR2程度, 5-6程度, 9程度の負荷が与えられたが, 女子大学生の場合はどの条件においてもPreferred Tempoの変化は認められなかった. すなわち, 成人女子では, 丁度よい動作速度は固定的で安定しているといえる. しかし, 中学生(特に女子)では運動後(中程度)の動作数が増大する傾向があり, 丁度よい速度はまだ不安定のようである. 3. 光の点滅および音の頻度に伴う変化については, 年齢の推移に伴う興味ある傾向が認められた. すなわち, 光・音刺激ともに速い速度の刺激を「丁度よい」と感じる感受性は加齢と共に減少する. しかし, 光・音ともに70〜80回/分の刺激速度は小学生, 中学生, 大学生, 老人のすべてのグループで「丁度よい速度」であった. 幼児・老人および中高年層における研究がまだ十分ではなく, 今後の課題にしたい.
|