研究概要 |
早期スポーツ活動が児童の心理的発達に及ぼす影響を明らかにするため, 次のような方法で調査研究が実施された. 1.第1次調査(横断的分析):小学校の男女児童およびその保護者を対象とし, 以下のような内容の調査を行った. (1)スポーツの勝敗に対する態度, (2)スポーツのゲームにおける行動規範, (3)体育の授業に対する態度, (4)自己概念, (5)YG性格検査, (6)体格および運動能力. なお, 保護者に対しては, 上記のうち(1)〜(4)についてのみを実施し, (2)および(4)については, 保護者の立場から自分の子どもを評価する形で回答を求めた. データは運動部への所属の有無によって分析した. 2.第2次調査(縦断的分析):第1次調査を実施した学校の中から1校を選び, その5〜6年生児童を対象として, 第1次調査と同様の方法で調査を行い, 両者の対応関係をみた. その結果, 運動部に所属している児童は, 所属していない児童や途中でやめた児童に比べて勝利志向が強く, その目標実現に向けて, かなり自分の行動を律している傾向が認められた. 一方, 体育授業に対しては所属者の方が好意的な態度を示している反面, 体育授業の価値や評価に対しては相対的に低くなる傾向がみられた. また自己概念については, 大旨, 所属者の方が自己を高く評価しており, YG性格検査においても, 社会的外向性, 支配性, のんきさ, 攻撃性が強いという, いわゆる「スポーツマン的性格」を示している. 以上のような特性は, 第2次調査による追跡によっても一部確認できてはいるものの, まだ充分な結論を引き出すには至っていない. しかしながら, これらの調査を通じて, 現在のスポーツ活動が運動能力の高い者を中心として運営されており, そのために参加者の資質を淘汰するという現象が生じていることが明らかになった.
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