研究概要 |
運動成果に交感神経活動がどの様に係わっているか明らかにするため, ヒトの随意筋収縮運動時の骨格筋支配の交感神経活動を(筋交感神経活動)を微小神経電図法神経電図法を用いて記録した. 1. 筋交感神経活動の記録と特徴に関する基礎的検討:運動時の筋交感神経活動の記録が可能であるかどうかの確認を行った結果, 高い精度で記録でき, その特徴も確認された. 2. 随意筋収縮時の筋交感神経活動:随意筋収縮として掌握運動を負荷した. 膝窩部脛骨神経より記録した筋交感神経活動は運動に伴い高まり, 掌握張力に比例して高まった. さらに, 一定の掌握張力発揮の時間経過に伴い筋交感神経活動は高まった. 同様の反応は律動的掌握運動においても見られた. 3. 活動筋の疲労感覚と筋交感神経活動の関係:5-7分間持続できる全力の掌握運動において, 活動筋の疲労感覚(0-10段階)及び筋交感神経活動はそれぞれ, 運動終了まで連続的に亢進した. 4. 筋交感神経活動と末梢血流量の関係:掌握運動時の筋交感神経活動と下腿血流量を同時に測定した結果, 下腿血流量は筋交感神経活動の亢進に伴い減少した. 5. 運動強度と筋交感神経活動の関係:片脚自転車運動と律動的掌握運動において, 酸素摂取量で表した運動強度は掌握運動が低かったにもかかわらず自転車運動よりも筋交感神経活動は高まった. 以上の結果から, 運動時の筋交感神経活動の亢進には, 末梢からの反射性亢進と共に運動中枢からの下行性神経活動が重要であると考えられる. 運動に伴う筋交感神経活動の亢進は運動時の昇圧反応や末梢循環調節に重要な役割を果たすと共に, 疲労に伴う筋収縮張力の低下を補償する(抗疲労作用)可能性も示唆された.
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