研究概要 |
新生児・乳児の原始歩行の差異を6名の被験者について動作・筋電図的に検討した. 生後1カ月までの新生児では, 着床前に前脛骨筋に放電がみられ, 腓腹筋に放電のみられない成人の基本的パターンが多く認められた. しかし, Forssberg(1985)が指摘する着床前に腓腹筋に放電のみられる四足歩行様パターンは殆どみられなかった. この時期の着床動作は, 足底外縁によるものが多かった. 生後1カ月を過ぎると着床前に内側広筋の放電が多く認められるようになった. これは, 膝伸展が積極的に行われ始めたことを示している. また, 着床前に腓腹筋の放電がみられる四足歩行様パターンが出現しはじめ, 成人の基本的パターンは減少しはじめた. このころから, つま先外縁による着床が多くなった. 生後3ケ月を過ぎると殆ど四足歩行様パターンを示し, 二足歩行様パターンはごく一部しか認められなかった. この時期はつま先着地が多かった. これらの実験結果より, 新生児期は二足歩行様パターン(成人パターン)が優位であることから, ヒトは二足歩行様のプログラムをもって誕生していることが推察できる. 以上, 新生児・乳児の原始歩行と従来より行ってきた乳幼児から成人に至る歩行の実験結果から, 原始歩行に用いられている歩行発生器は独立歩行前の支持歩行, 独立歩行, 幼小児及び成人歩行に引き続き用いられているものと思われる.
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