研究概要 |
Kunit_2型キモトリプシンインヒビターWCI-3は, シカクマメ種子中に最も多量に存在するインヒビターで, その活性ならびにタンパク質は, 開花後35日目頃の未熟種子中に初めて検出され, その後増加する. このインヒビターの発現制御を解析するとともに, そのcDNAクローンを単離し全塩基配列を決定した. (1)登熟過程にある種子中のmRNAの解析:開花後30, 35, 40日目の未熟種子中より全ポリ(A)^+RNAを調製し, ウサギ網状赤血球無細胞タンパク合成系を用いて翻訳させた. 抗WCI-3抗血清と反応する特異的産物の分析から, 35および40日の種子にはWCI-3mRNAが存在するが, 30日種子には存在しないこと, また翻訳産物の分子量は, 精製WCI-3より大きく, WCI-3成熟の過程でプロセシングがあることが明らかになった. (2)WCI-3cDNAクローンの単離とその塩基配列:35日目の種子より調製した全ポリ(A)^+RNAに対するλgt11cDNAライブラリーを作製し, 抗体選別によりWCI-3cDNAを単離した. 207アミノ酸からなるペプチドをコードし, その25番からC末端までの183残基からなる推定アミノ酸配列はWCI-3の一次構造と完全に一致し, WCI-3cDNAであることが確認された. N末端の24アミノ酸からなる領域は, 疎水性残基に富み, シグナル配列と推定された. 無細胞系での産物の分子量がWCI-3より大きかった原因は, この配列によることが判明した. (3)ノザン分析によるWCI-3mRNAの解析:30, 35, 40日の全ポリ(A)^+RNAについて, クローンcDNAをプローブとしてノザン分析した結果, mRNAは約900塩基の大きさで, 35, および40日で検出されることが明らかになった. 本インヒビターの発現は, mRNAの蓄積により制御されていると結論される.
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