高度好熱菌DNAの結合蛋白質を精製する為に、Thermus Thermophilusの20l培養を繰り返し行ない、菌体1.5Kgを集め、これを以下の実験に用いた。実験では、DNA結合蛋白質の存在の確認と精製方法の検討を第一に行なった。その為に、DNAを結合させた親和クロマトグラフィー用のカラムを作製し、これに結合する蛋白質の分離を試みた。その結果、少なくとも3種のDNA結合蛋白質が確認された。その内の一種は、既に我々がBacillus stearothermophilusから結晶化、構造解析を行なったものと分子量が類似し、同種の蛋白質と考えられる。しかしながら、3種ともに収量が少なく、解析に足る量を確保するには、やや困難が予想される。そこで、DNA結合蛋白質の耐熱性を利用した精製方法を検討した。摂氏90度、30分の熱処理で、多くの不純蛋白質は沈殿するのにし、DNA結合蛋白質は、ほとんどが、インタクトのまま回収されることがわかった。現在、大量精製の準備、および、これまでに得られている蛋白質を使った結晶化のテストを行なっている。並行して行なった、X線結晶構造解析ソフトウェアーの開発では、パーソナルコンピュータ上で、電子密度図をもとに、蛋白質の分子構造を構築するプログラムシステムを開発した。従来、高価な3次元コンピュータグラフィクス装置でしか行ない得なかったこの種の作業が、非常に安価に、また手軽に行ない得るようになったといえる。同システムは、2種の蛋白質の構造解析に利用された。
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