研究概要 |
1.血小板糖蛋白GPIbの多様性とその生理的意義-GPIbの限定分解産物であるグリコカリシン(GC)をヒト血小板より高収率で精製する方法を確立した. 精製したGCを種々プロテアーゼで分解し, GPIbの多様性が約90Kの糖ペプチド部分に存在することを見い出した. 又40Kペプチドに対する抗血清を作製した. GPIbの多様性の生理的作用を明らかにする目的で, 脳血栓症患者血小板のGPIbを分析した. 患者数が18名と少ないが, アメリカ人に多いC型が患者群で多く, 少ないD型が少ない傾向を示し, C型と血栓症との関係に興味が持たれた. 今後例数を増してこのことを確認したい. 2.血小板膜糖蛋白の生合成-巨核芽球糸の培養細胞(CMK)がホルボールエステルで刺激すると巨核球様細胞へ分化し, GPIb, IIb, IIIaなどの血小板特異蛋白を発現するようになることを見い出した. GPIbとIIbに関してはその前駆体が細胞膜より重い比重の分画に存在し, これは分化が進むに従い成熟型となり細胞膜表面に現われることが示された. 3.GPIIb前駆体を有する血小板無力症患者血小板の研究-我々は分子量の異なるGPIIbを有する新しいタイプの血小板無力症患者を2家系見い出した. この異常GPIIbは1本鎖で, 正常GPIIbα鎖より分子量が大きく, 血小板表面には存在せず又GPIIIaと複合体を形成しないという事, 更には上で述べたGPIIbの前駆体と分子量が全く同一であることなどから, 異常GPIIbはGPIIbのα鎖とβ鎖が水解されない前駆体の形であると推定された. これら患者血小板はGPIIb/IIIaの生合成過程の解析に大きな寄与をするものと思われる.
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