研究概要 |
1.可溶化【Na^+】,【K^+】-ATPaseの酵素活性を、高性能ゲルクロマトグラフィー・カラムの中で発現させる条件が、以下のように決まった。 (1)カラム:TSKgel G3000SW(7.5×600mm)(2)溶出緩衝液:0.3mg/ml 【C_(12)】【E_8】,60μg/mlフォスファチジルセリン(牛脳,98%純度.Sigma社)、0.05MNaCl,0.05MKCl,1.33mMATP,4mMMg【Cl_2】,1mMEDTA,10mMイミダゾール-15mMHEPES,ph7.0(3)その他:流速0.50ml/分;温度,20℃。以上の条件で、8.6から281μg蛋白質の可溶化ATPaseをカラムに負荷して、クロマトグラフィーを行った。その結果、蛋白質負荷量に依らず、常に単一の蛋白質成分が溶出した。溶出液中のPiを測定することにより、カラム通過時のATPase比活性が測定された。それはまた、蛋白質量に依存せずほぼ一定で、1.94±0.13μmolPi/min/mg proteinであった。この活性値は、膜結合型【Na^+】,【K^+】-ATPaseの比活性の64±4%で、insituの活性値にほぼ匹敵するものであった。 2.上記のクロマトグラフィーで溶出した蛋白質成分の分子量を低角レーザー光散乱法で測定した。その結果、分子量は最大値214,000から,蛋白質量の減少に応じて、小さくなった。34.2μg以下の蛋白質量では、αβ-プロトマーに相当した分子量(160,000±3,000)で一定であった。以上の結果より、ATPase活性を発現できる最小構造単位は、【(αβ)_2】-ダイプロトマーではなく、αβ-プロトマーであると結論した。 3.強心ステロイド(ウアバイン)処理でturnoverを完全に阻害された可溶化ATPaseの分子量も、上と同じ蛋白質量範囲で、280,000から192,000へ連続的に変化した。この結果から、ATPの加水分解反応と2プロトマー【→!←】ダイプロトマーの構造的相互変換が直接共役していないことが明らかになった。
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