研究概要 |
動物の鉄代謝上重要な蛋白質transferrin(Tf)は、N.C2つのdomainからなり、それぞれに一つずつ金属結合siteを有する。各siteは適当なbivalentanionを外部配位子(synergistic anion.生理的には【CO(^2-_3)】)とし、三元錯体Tf・metal・anionを形成する。本研究ではTfとしてニワトリ卵白中のもの、anionとして【CO(^2-_3)】,【(COO)(^2-_2)】,【CH_2】【(COO)(^2-_2)】を用い、(1)錯体の生成機序を明らかにすると共に、(2)N.C両siteの錯形成能差、(3)両domain間の協同効果を、synergistic anionとの関連において検討した。 (1)N,C両siteへの【CO(^2-_3)】の配位を定量的に検討した結果、先ずapo-Tfに【CO(^2-_3)】が結合、その後金属が配位して、三元錯体の形成が起こることが明らかにされた。【CO(^2-_3)】の結合性はC siteに大きく傾いていることが判明(結合定数、N site:〜【10^4】【M^(-1)】,C site:〜【10^8】【M^(-1)】)。(2)N,C両siteは結合しているanion種(anionは予め両siteに十分結合している条件で)により鉄結合能が大きく変化、鉄が十分結合するアルカリpHで、【CO(^2-_3)】,【CH_2】【(COO)(^2-_2)】の場合、鉄はN配向性であるのに対し、【(COO)(^2-_2)】の時はC配向性となる。また三元錯体の安定性は、【(COO)(^2-_2)】では強い耐酸性を【CH_2】【(COO)(^2-_2)】では二相性(C側安定)を示し、鉄放出が非効率的であるのに対し、【CO(^2-_3)】では両siteが弱酸性で同調的に鉄を脱離、細胞への効率的な鉄の供給を示唆した。(3)Intact Tf、N,C半分子fragmentの鉄錯体の熱や塩酸グアニジン等による変性実験から、【CO(^2-_3)】を配位した時には両domain間の協同的安定化効果が認められたが、他anionではその効果は低下した。(4)【CO(^2-_3)】を配位anionとした時、両site間に正の協同作用の存在が確認され、N siteに鉄が結合すると、隣のC siteの結合定数は14倍増加する。しかし、他anionではこの様な作用は殆ど認められなかった。以上、Tfの鉄結合と供給に対し、anionが調節機構の役目を持ち、生理的anion【CO(^2-_3)】が配位するとき、その機能が有効に働くと考えられた。
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