研究概要 |
(1)オリゴ糖の微量分析法の開発:オリゴ糖の還元末端をReductive-Aminationにより紫外線吸収試薬(P-Aminobenzoic acid ethylester,ABEE)で修飾した誘導体を用いる簡便、高分離かつ高感度の中圧液体クロマトグラフ法を確立した。オリゴ糖とABEEの反応はほぼ定量的に進行し、オリゴ糖の種類にかかわらず、304nmに強い吸収を示した。分子吸光係数は還元末端の糖の種類にのみ依存しており、ヘキソースの場合2.2×【10^4】,GlcNAcの場合1.9×【10^4】であり、本法によるオリゴ糖の定量分析の可能性が認められた。ABEE化オリゴ糖は水を溶出液(22ml/h)とする、50℃でのBio Gel P-4(-400mesh)カラム(2.0×100cm)により、中性オリゴ糖1糖ずつ、グルコースオリゴマーにして約26糖迄分離され、しかもその分離は同一カラムによる未修飾オリゴ糖の分離より優れていた。HPLC用紫外線検出器を用いると数ナピコモルのオリゴ糖の分離、検出が可能であった。本法は特殊な装置を必要とせず、極めて簡便な分離分析法である。(2)蓄積オリゴ糖の臓器分布:上法を用いて、β-マンノシドーシスヤギの脳,腎臓,肝臓,甲状腺中の蓄積オリゴ糖の定性定量分析を行った。臓器により蓄積量に著しい差が認められたが、蓄積物はいずれの臓器においても、Manβ1-4GlcNAc,Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc,Manβ1-4GlcNAcβ1-4Manβ1-4GlcNAcおよびManβ1-4GlcNAcβ1-4Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAcであった。正常および保因ヤギにはこれらのオリゴ糖は認められなかった。尿中に排出されたオリゴ糖も同様に解析し、上記4種のオリゴ糖の他に6〜8糖に相当する数種のオリゴ糖の存在を認め、現在構造解析中である。(3)糖タンパク質糖鎖の構造:正常および疾病ヤギの腎臓、尿中糖タンパク質画分の糖組成はほぼ同一であり、現在のところβ-マンノシダーゼ欠損に起因する糖鎖異常は認めていない。(4)オリゴ糖の免疫組織学的検出:現在Edestinにオリゴ糖を結合し、それを用いて免疫中である。今後この課題を中心に研究を進める予定である。
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