研究概要 |
ウサギ骨格筋よりm, μ2種類のカルシウム依存性中性プロテアーゼ(CANP)を精製し, これらを抗原としてモノクロナル抗体を常法にしたがって作成した. その結果, mCANPを抗原として免疫したマウスから15種類の抗mCANP産生クロンを得た. これらの抗体は全てウサギmCANPおよびラットmCANPの大サブユニットと反応し, 小サブユニットに対する抗体はなかった. 1種類の抗体はμCANPの大サブユニットおよびニワトリCANPの大サブユニットとも反応し, 広くCANPに共通な抗原部位を認識するものと考えられる. 一方, μCANPを抗原として免疫したマウスからは77種類におよぶ抗μCANP産生クロンを得た. その内には小サブユニット(mCANPとμCANPで共通)に対して特異的なものも含まれていた. そこで, 先ず両CANPに共通に反応する抗体を用い, ウサギ各種組織における分布・存在部位を検討した. 各種臓器の冷結切片をアビジンービオチン複合体法により抗体染色すると, 多くの臓器で上皮系組織(例えば, 肺臓の肺胞細胞, 肝臓の小葉間動静脈・胆管, 骨格筋の小血管, 腎臓の糸球体・糸球体旁細胞・遠位尿細管・集合管, 胆のうの粘膜上皮, 精巣の間質細胞, 脳脈絡叢の立方上皮細胞などが強く反応した. 一方, 基底膜の発達していない上皮細胞である肝実質細胞は弱くしか染まらなかった. これらの事実からCANPの生体内での生理機能として, 基底膜を通じての物質の輸送系に関与している可能性が示唆された. 次いで, μCANPおよびmCANPに特異的な抗体を用いて各CANPの存在部位を個別同定したところ, 一般的にμCANPとmCANPの染色像に大差はなく, mCANPの方がμCANPより高濃度に存在した. 例外的な組織として腎臓の集合管があり, こゝではμCANPの抗体により強い染色が認められた.
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