(1)新鮮な仔牛胸腺より、抗DNAポリメラーゼα単クローン性抗体(CL22-2-42B)をセファロースに結合した担体を用いて抗体カラムを作成したところ、充分な活性のある酵素標品が「DNAポリメラーゼα-プライマーゼ」複合体として得られ、DNAポリメラーゼαを蛋白化学的に分析するに足るだけの純度を持つ標品を初めて得ることが出来るようになった。また仔牛胸腺の「DNAポリメラーゼα-プライマーゼ」複合体は、従来より報告されているような複雑な複合体ではなく、分子量約15万のペプチドと55-53万のペプチドのみからなっていることが解った(Μ医学生物学研究所玉井克之所員との共同研究)。(2)精製した仔牛胸腺DNAポリメラーゼαの分子量約15万を示す活性ペプチドは、変性条件で電気泳動後転写したニトロセルロース膜上でもDNA結合活性を示すが、このペプチドを化学処理や蛋白質分解酵素で限定分解したところ分解産物のDNA結合活性は急速に弱まったので、DNAポリメラーゼα活性関連ドメインをDNA結合活性を指標に検出するのは困難であることが解った。(3)そこで、別の活性ドメイン検出法として、紫外線によるDNAポリメラーゼαと、鋳型プライマーとの架橋形成反応を用いて研究を進めた。この反応は、動物細胞DNAポリメラーゼαの性質を知る上でも興味あることなので、反応の至適条件や様々な鋳型DNAとの反応について検討した。その結果紫外線架橋反応を行う際の鋳型としては、仔子胸腺活性化DNA以外に合成DNAオリゴマーである【(dT)_(10)】【(dA)_(10)】が使えることが解ったので、架橋反応生成物を単離する際にDNA分解酵素による処理が不要となった。(4)現佐、分子量約15万ペプチドの、紫外線架橋反応で鋳型DNAと架橋される部分のアミノ酸配列の決定を、気相ペプチドシークエンサを用いて行なっている(愛知がんセンター田部一史博士との共同研究)。
|