研究概要 |
細胞表面の各種リセプターは基質を受容すると基質と共に内在化し, 基質はリソゾームで分解され, リセプターはリサイクリングし細胞表面に再び出現する. そのリサイクリングのどのステップでインシュリン受容のシグナルが伝達されるか明らかでない. 最近インシュリン・リセプター・キナーゼに変異があるとリセプターの内在化が阻害されることがわかり, 内在化と機能発現の関係に興味があつまってきている. 本研究により以下の新しい事実が明らかとなった. 1.従来クロロキン, ディブカインなどのアシドトロピック剤はリセプターのリサイクリングを阻害するといわれてきたが直接的にイムノブロッティング法や再構成法で調べるとこれらの薬剤はリサイクリングには影響を与えずインスリン作用の発現にも影響がなかった. さらにインシュリンが分解されないでリサイクリングすることもわかった. 2.電子顕微鏡による観察から細胞膜直下に低密度ミクロゾーム分画に存在すると同一形態の小胞が存在していた. この小胞が糖輸送体やインシュリン・リセプターのリサイクリングと関係する可能性を指摘した. 3.リボゾームタンパクS_6のリン酸化がインシュリン作用の発現と密接に関与していることを見出した. 4.インシュリン・リセプターのリサイクリングとインシュリン作用の発現の関係を調べるため内在化の阻害剤を各種用い, インシュリンの結合, 内在化, 糖輸送, S_6タンパクのリン酸化との関係を調べた. 内在化とこれらの指標に平行関係が認められ, 内在化がインシュリン作用発現に重要であることがわかった. 以上, インシュリンによる細胞内情報伝達機構の各ステップの基本的情報を入手することが出来た.
|