研究概要 |
プラスミドpSC101によってコードされ, そのDNA複製開始に特異的に要求されるRep蛋白質を遺伝子工学的手法により大量生産する系を開発し, この蛋白質を用いて以下のような実験結果を得た. 1. Rep蛋白質の大量生産菌から各種カラムクロマドグラフィー法を用いてこの蛋白質を分離精製することができた. そこで, 大腸菌の粗抽出液一硫安塩析画分を用いてin vitro複製開始反応をおこなった. 大腸菌染色体の複製開始は起るなどDNA複製活性は十分あるにもかかわらず, Rep蛋白質に依存したpSC101DNAの複製は観察されなかった. その原因が精製Rep蛋白質にあると考え, Rep蛋白質のDNA結合活性の解析をおこなった. 2. Rep蛋白質のDNA結合部位の解析をゲルシフト法, エキソヌクレアーゼ消化法, 及びフットプリント法を用いておこなった. その結果, Rep蛋白二量体/DNAモル比が1〜3という低濃度でRep蛋白質は自己の構造遺伝子rep遺伝子のプロモーター領域と重複して依存する逆反復配列に結合した. そして更に50倍以上の高濃度になって初めて複製開始領域の3個の反復配列に結合した. 3. 低濃度のRep蛋白質がrep遺伝子の転写を特異的に阻害することをin vitro実験で確認した. 以上の実験から精製Rep蛋白質はrep遺伝子発現の調節機能は有するが, それ自体のみでは複製開始機能は不充分で, 何らかのコンフォメーション変化あるいは他の因子との複合体形成を通して複製開始反応に関与することが強く示唆された.
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