研究概要 |
副腎皮質の三つの細胞層(球状・束状・網状)で鉱質コルチコイド, 糖質コルチコイド及び副腎性ホルモンが生合成されており, 各細胞層におけるホルモン産生の機能局在化について酵素レベルでの解析が必要である. モルモット副腎皮質の各細胞におけるP-450の分布と酵素活性の解析から分子レベルでのステロイドホルモン生合成の産生機構の解明を試みた. モルモット副腎皮質の免疫組織学的な解析から, P-450_<17α, lyase>は, 束状層と網状層に存在するが, 球状層にはまったく存在しないことが示された. 一方, P-450_<c21>は全層にわたり存在した. 21位水酸化活性は, 外層(球状・束状層)ミクロソームに比べ内層(網状層)ミクロソームで高い値を示し, この活性の相対比は, P-450_<c21>比含量の相対比に一致した. 一方, 17α位水酸化とリアーゼ活性の相対比はP-450_<17α, lyase>の比含量の比に一致しなかった. この事実から, 細胞内でのステロイドホルモン産生は単にP-450分子種の量比だけでは支配されないと考えられる. モルモット副腎では, アンドロゲンの産生は主に束状層で行われていることが示唆された. 更に, 下垂体からのACTHが副腎皮質の各細胞層のP-450及び酵素活性に及ぼす影響を解析した. モルモット血中のACTHが低いレベル状態では, 外層のP-450_<17α, lyase>量と17α位水酸化活性は抑制され, ACTH投与で再び増加する傾向を示した. 内層においては, これらの変動は観察されなかった. 一方, ACTH投与により, 外層と内層の21位水酸化活性は抑制される傾向を示した. ACTHで引き起こされる血中コルチゾル上昇効果にはミクロソームよりミトコンドリアにおける反応が主要な役割を果たしていると考えられる.
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