研究概要 |
M.luteus菌の野生株ATCC4698をニトロソグアニジン処理して, UVおよび4NQOに高感受性になった変異株を多数分離した. これらの変異株はマイトマイシンC, シスプラチン, ソラーレンなどに対しても野生株に比べて高い感受性を示した. さらに, これらの変異株の抽出液中には野生株と同じレベルのUVエンドスクレアーゼ活性が存在することが分った. UV照射されたN6ファージに対する宿主細胞回復能(Hcr)を調べたところ, この機能を保持しているHcr+型のものと, 欠損しているHcr-型のものがあった. Hcr+型はX線にも高感受性でしかもUV誘発突然変異が全く検出されなかった. このタイプの変異株は大腸菌のrecA変異株にきわめて性質が似ている. 一方, Hcr-型の変異株は野生株と異ってソラーレンおよびその誘導体であるアンジェリシンによるDNA損傷の修復ができないことが分った. これらの薬剤存在下で近紫外光と照射すると, 光化学反応によってDNAに結合し, 架橋やモノアダクトを生成する. 野生株ではこれらの損傷を認識してDNAにnicRを入れる作用をもつ酵素が存在するが, Hcr-型の変異株ではこの活性が失なわれていた. 従来は, M.luteusのUV損傷を修復する酵素としてはUVエンドスクレアーゼが見出されていたが, この研究から, M.luteusにも大腸菌のuvr遺伝子によって支配されている, bulkyなDNA損傷を認識しうる除去修復系が存在すること, この酵素の機能が細胞の生存率回復において主要な役割を果していることが明らかになった. また, これらの変異株においてもUVによってDNA上に生じたピリミジンダイマーの修復は正常に行なわれていることが分った. この事実は, この菌ではピリミジンダイマー以外の他の何らかの損傷が致死的に作用していることを示している.
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