研究概要 |
高エネルギー物理学研究所放射光実験施設(PF)で得られる単色軟X線を用いて, リンK殻吸収端(エネルギー2,143keV, 波長5,787〓)近傍における, DNAフィルムの吸収スペクトルと, 1本鎖, 2本鎖切断の誘発を調べた. しかし, 精製したプラスミドDNAに乾燥状態でX線を照射すると, 未知の新しい高次構造が誘発される場合があることが判明したので, その解明に取り組んだ. マシンタイムの配分が十分でなかったこともあり, 主鎖切断の末端構造についての実験は, リガーゼを用いた場合についてのみしか行えなかった. DNAフィルムの吸収スペクトル. 子ウシ胸腺DNAを薄いフィルムにしてX線の吸収スペクトルを測定した. 得られたスペクトルは, 2,153keVに大きなピーク, 2,167keVに小さなピーク, その中間の2,159keVには谷を示した. 照射実験はピークの2,153keVと, その前後の2,147, 2,160keVで行った. DNA主鎖切断の誘発. pBR322DNAを真空中(〜10^<-6>Torr)で単色X線を照射し, 復水後, アガロース電気泳動法でFormI, II, IIIを分離し, FormI残存率から1本鎖切断, FormIII生存率から2本鎖切断の生成を求めた. 電離箱で測定した照射線量(R)を, 試料の元素組成とμen/ρから求めた換算因子で吸収線量(Gy)に換算した. 1本鎖切断を1個作るのに要する吸収線量は, 3つのエネルギーで等しくなり, リンK殻電離が特に有害でない事を示した. 2本鎖切断の場合は, ピークエネルギーで, 有意に効率よく生成される事がわかった. 乾燥DNAに生成される未知のX線損傷. DNAを精製後, 微量の緩衝液成分と乾燥させX線を照射すると誘発される. その誘発される条件を決めるとともに, 電顕写真上り形状を決めた.
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