研究概要 |
トリウム炉設計用の核データとして、【^(232)Th】の中性子断面積、特に共鳴エネルギー領域でのデータは重要とされる。しかし、今迄に得られたデータ、評価値にも20%前後に及ぶ大きな差異が存在しているので、本研究では、これらのデータを実験的に評価することとした。まず実験は京大炉の電子線型加速器を用いた飛行時間分析法により、トリウム金属板試料に対する中性子透過率測定及びセルフィンディケーション実験を行った。まず(1)中性子透過率測定のデータを基に、Shape Analysis法を適用することにより、【^(232)Th】の共鳴放射幅Гγ,Гnを求めた。本実験では低エネルギーの4主共共鳴に加え、17のS波共鳴に対しても測定を行った。その結果、Olsen,Chrienらが得た最近の共鳴パラメータ値は我々のデータと一致を見たが、Rahnのデータ及び日本の評価データJENDL-2値は、特に低エネルギー共鳴に対して低目であることが分った。次に(2)1/E標準中性子場において【^(232)Th】(n,γ)反応による共鳴積分を測定し、86.2±3.6バーンの値を得た。(3)先に得られた共鳴パラメータについて、これを積分的に評価するために、個々の共鳴パラメータを使った計算による共鳴積分値と、標準場で測定した共鳴積分について比較を行った。(4)その結果、JENDL-2の共鳴パラメータを使った共鳴積分は実測値より約7.3%低くなり(1)に挙げた結論と同じ結果を得た。(5)最後に、非分離共鳴領域による実験と解析結果からは【^(232)Th】の自己遮蔽因子に関する実験的評価を行った。トリウム試料からでる高いガンマ線バックグランドに対し、中性子飛行路を約6mと短かくし、信号雑音比を上げて実験することができた。その結果、1〜40kevのエネルギー範囲では、既存の評価データ(JENDL-2,ENDF/B-IV)は誤差内でほぼ実験値を再現できることが分った。
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