研究概要 |
1.府県史・市町村誌類から抽出した地租改正関係の資料を分析すると、改租事業の施行期、その期間をはじめ、土地丈量法,字限図・村限図の作製過程,および地籍図類の呼称についても府県あるいは地区による差がみられる。これは、府県・地区による対応の相違と、斯業の困難性を示している。 2.広島大学附属図書館所蔵の広島国税局寄贈中国五県土地・租税資料文庫には多くの地租資料と尨大な地籍図が含まれている。地籍図については、とくに島根・岡山両県の各種のものが存在する。島根県能義郡だけでも241枚を数える。その呼称は郡村地では絵図・絵図面・地引絵図など10種以上の名称がみられ、山林原野の地籍図でも山図・山林絵図・山林柴草山絵図など10種以上の呼称が用いられている。今後中国5県全体の地籍図の類別と作製年代の推定、および作製過程の分析が課題となる。 3.税務大学校租税資料室と愛知県公文書館には、近世・近代の租税資料と地籍図類が豊富に所蔵されていることを確認した。前者の諸税資料には既刊本があり、収蔵の地籍図は全国的であるが断片的・散在的である。しかし、全国的視野から系譜的に地籍図をみるには貴重な資料になる。今後の活用が期待される。愛知県公文書館は開設早々で、まだ十分整備されていない。 4.地籍図作製過程を分析する基礎資料となる「地租改正ニ付人民心得書 およびそれに類似する心得書は26県のものを収集した。これは画一的なものであるべきだが、布達の時期,条項数などに著しい府県差がみられる。これを類型化すると、(1)初期の千葉県型(2)後期の福島県型、および(3)独自性の強い栃木県型に分類できる。(1)は「租税寮改正日報 44号(明治6年10月)に掲載されたこともあって、これを参考にした府県は多い。(2)は反別調・絵図・地価・収穫ごとに示しており、完成型ともいえる。従って条項も最も多い。
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