研究概要 |
1.本研究では, 地下水が多目的に利用されている秋田県六郷扇状地において, 扇状地の水文環境, 地下水利用, 地下水位の変動, 地下水の水質, 地下水の人工涵養, 地下水管理のあり方等を現地調査に基づいて総合的に論究することを目的とした. 2.複数の観測井による水位測定の結果, 水位変動の年変化パターンが明らかにされた. 六郷扇状地(扇央〜扇端)の地下水位は, 4月上旬の融雪時と5〜8月のかんがい期に高く, 非かんがい期, 特に積雪期間に低い. 3.積雪期間の地下水位の低下を防ぐために, 浸透池, 水田, スリット(溝渠)の各方法による地下水の人工かん養を実施し, 一定の効果を得た. 4.生活用に活用されている扇端部地下水の水質分析を行い, 水質の年変化パターンを明らかにした. 分析項目は, イオン系の主要7項目のほかに, T-N, T-P, BOD, COD, SSである. 5.扇端部の生活用地下水の保全を前提として必要とされる地下水の保全策は, (1)地下水位変動のモニタリング装置の導入 (2)水質変動のモニタリング装置の導入 (3)地下水涵養域の保全 (4)地下水人工涵養の導入などである. 6.以上の研究成果は, 『扇状地の地下水管理』と題してまとめた別添の報告書(昭和63年3月)のほかに, 次頁に記した諸論考(研究発表論文等)において公表した. 7.本研究をさらに深化させるために, 今後の課題として扇央の地下水涵養域と扇端の地下水利用域に深さの異なるピエゾメーター群を設置し, 地下水位および地下水質の変動のモニタリングを行うための基礎的研究に着手してゆきたい.
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