研究概要 |
1.離水した緩傾斜の海食台が波食を受けてどのように変形し, どんな地形が形成されるのかを室内実験により調べた. 平面造波水槽中に模型岩石で緩斜面を作り, これに実験波を作用させて海食台を形成させた. 実験では砕波後の波が初期地形(原地形)に作用し, 海食台が作られたが汀線アングルは海面より多少高い所に位置し, 海面下に急崖を形成するようなプロセスは全く観察されず, 芽根・吉川(1986)が提案しているような段丘形成モデルは実験的に説明することは困難であることがわかった. 2.完新世の岩石海岸段丘の形成を記載する数学的モデルを作製した. 連続した海面上昇後に生じた間欠的な地盤の隆起によって形成される段丘の幅は次式で示される. W_i=[Z_i(B+R_iτ_i+λ_i)/h_b]-R_<ε+1>λ_<ε+1>(i=1, 2, ………n) ここに, λ_i=(h_b+Z_<i-1>)(λ_<i-1>+R_<i-1>τ_<i-1>)/h_b, λ_0=λ_1=λ_2=0, R_0τ_0=R_1τ_1, Wは段丘の幅, Zは海面の下降量, Rは崖の後退速度, τは海面の停滞時間, Rτは崖の後退距離, λは海面と原地形との交点から初期汀線位置までの水平距離, Bは原地形における海食台の幅, h_bは浸食限界水深, 添字i-1, i, i+1はそれぞれ海面i-1, i, i+1を示す. 3.上述のモデルを使用して, 離水年代の不明な段丘の年代を地形(段丘の縦断面形)から推定しようとする一つの試みが行われた. ニュージランドのワイララパ地域プケムリ川地点には7段の段丘が発達しており, I, V〜VII段は離水年代が既知である. これらのデータをキャリブレーション用に使用して, II, III, IV段の離水年代を推定した結果, それぞれ6000, 5300, 4300YB.P.という値が得られた.
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