研究概要 |
酵母を宿主として有用物質を生産する際, 目的の遺伝子のプロモーター領域に効率のよいものを使用することに研究の主力がおかれてきた. 本研究では, 遺伝子発現に影響を及ぼすベクターの安定保持に関与する宿主因子について研究する目的で, 核性変異株を単離し, その性格づけを行った. 1.map遺伝子(maintenance of plasmid) 酵母に内在する2μプラスミドの安定保持には, プラスミドがコードするSTB機構と, コピー数を高めるInversion機構が働いている. これに対し, 宿主因子の変異株を単離する為, 2μのORIとLEu2を含むプラスミドを指標とし, Leu^-を放出しやすくなった変異株(mapl)を単離した. この株では, 2μばかりでなく, ARS1とCEN4を持つミニ染色体も不安定であった. map1で比較的安定に保持されるプラスミドを, YEp13をベクターとした遺伝子バンクより, 2種, 単離した. 1つは, Insert内にARSを持つもので, 同一のプラスミド上に複数のARS1が存在すると, より安定になることが示された. もう1つは, 2μのInverted Repeatを持つもので, このタイプは, invivoでも生じ, papillaeより単離された. これらの結果から, map1では, 複製能が低下したため, 核外因子が不安定になると解釈された. 2.gst1遺伝子(G1-to-Sfransition) ミニ染色体のコピー数調節機構を利用して単離された高温感受性変異株の中に, ミニ染色体や, 2μの安定保持に, 温度依存性のある株を見つけた. この株では, 温度を36°Cにすると, G1よりS期への移行がブロックされている. ts性を相補するDNA断片をクローンし, 構造解析した結果, 遺伝子産物は, 部分的に, 翻訳に必須なEF1αとのホモロジーが存在する, 分子量 7万6千の蛋白であることが判った. 又, OFAGE, 四分子解析により, 染色体4番cdC37近傍にマップした.
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