研究概要 |
ミオグロビン(Mb)は, 迅速に相互転換する4つのコンフォマー(CIV)からなり, CIVが酸素チャンネルをもつ構造と予想されるが, 全体の2〜3%しかないため, その構造と性質は不明である. 本研究では, 遺伝子工学的手法を用い, CIVが主成分のMbを調製し, その構造と性質を解明することを目的とする. 牛胎児の骨格筋より得たmRNAを用いOkayama-Bergの方法によりcDNAバンクを調製し, ウシMb, cDNAをクローニングした. MBdideoxy法により塩基配列を決定し, ウシMbと同じ長さのOpen-Reading Frameを見つけた. 推定されるアミノ酸配列は, 報告されているウシMbの配列と8箇所を除き一致した. この比較的多い不一致は, すべてC末端付近の種間変異の多い領域に局在しており, 今後検討すべき問題である. ウシMbcDNAを酵母のGAL7プロモーターの支配下におき, 酵母内でガラクトースにより誘導的に発現させる事に成功した. 酵母から, 抽出・精製した標品を筋肉からのそれと1)SDS-PAGEによる分子量2)N末端構造, 3)酸素化型Mbの紫外・可視吸収スペクトルにより比較するとすべて同一であった. また酵母内でMbは筋肉内と同様に酸素化型として存在し, 以上の事から今回用いた宿主-発現ベクター系は, 研究目的に適ったものと判断された. MbcDNAの部位特異的変異を行う為, 5種のOligonucleofideを合成した. これにより, 43番目フェニルアラニン(→セリン), 64番目ヒスチジン(→グルタミン, グリシン, セリン, アルギニン)を, それぞれ( )内のアミノ酸に変化させた. CIVを不安定にしている主原因は, 64番目のヒスチジンと考えられ, このアミノ酸の置換そして立体的位置を変えることでCIVを安定化しようと試みている. 本研究では, 研究計画にそった成果を着実に得ているが, 目的はまだ達成しておらず, さらにこの方向に研究を進めていく予定である.
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