研究概要 |
文献研究を中心に, 「数」概念の発達を調べた. 特に, 子供の「数」概念の発達段階を, 暗算と筆算, そして, 見積りとの関連で, 概算・概測についての役割を明らかにするとともに, 子供の認知メカニズムを解明した. 実態調査では, 子供の誤答を中心に, 暗算・筆算と見積りとの関連で行い整数, 小数, 分数に関する四則計算を行った. これから, 暗算・筆算と見積りとの関連を数の系統性を, 見直す必要があることがわかった. 今回の研究では, カリキュラムの提言まで行うことができなかった. この点については今後の課題の一つとして残す. なお, 代表者が, 62年6月8日から10月8日迄, 「フルブライト」のフェローシップを得て, 北アメリカとカナダで, 上記の研究課題と関連した内容について研究と調査を行った. 特に, コンピュータや電卓の利用状況について, 現職の先生と子供との授業場面での活用は, 今後の我が国の数学教育に役立つものがあると思われる. この点については, 現在, 我が国で行われている「教育改革」の情報化社会の進む中での教育のあり方と国際社会が進む中での数学教育の在り方について, 多くの示唆を得た. たとえば, 「数」概念の利用は, 子供が用いる道具, つまり, コンピュータや電卓によって, 飛躍的に増大すること, さらに, データーを見直すことによって, 数の多様な見方を発見することができるなどである. 今後の話題として, 見積りを中心にした「数の計算」のカリキュラムについての研究が残されていると同時に, 中・高学年の生徒について, 計算力はある程度身についているが, 数を用いた多様な見方, つまり, 思考力については, 必ずしも望ましい成果は得られなかった. この点については, 更に研究する必要があろう.
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