研究概要 |
野外で観察した空間(体験空間)を教室内で地形図(抽象空間)上に同定させる2実験を次の要領で行ない、その結果から下記のような知見を得た。 〈実験1〉広島大学附属福山高等学校第1学年生徒を対象の実験 61年11月9日に、福山市仙酔島の西端部の海岸で、ヒン岩の岩脈を追跡させ、約1ケ月のちに、地形図上でこの岩脈の観察地点,観察ルートを同定させたり、岩脈の分布を記入させた。 〈実験2〉小林聖心女子学院中学校第3学年生徒を対象の実験 62年1月21日に実施の宝塚市〜西宮市の山中約12kmを歩く耐寒遠足に参加した生徒について、10日のちに、歩いたルートを地形図上,カラー空中写真上で同定させるとともに、主な山頂で認知した環境構成物を自由記述させた。 〈知見〉 実験1では、観察の対象が崖の地質であり、また、地形を構成する景観をとらえ難いルートを歩いたためか、地形図上での観察地点・観察ルートの同定率はともに低く、約20%である。また、正答者は砂浜と岩が突出した岬状の地形が繰り返えすパタンを適確にとらえていることがわかった。さらに、岩脈の分布を地形図上に正しく記入できた生徒は、岩脈の立体的な形を正確に抽象できる生徒であることもわかった。 実験2では、山頂の近くに見える他の山頂,ダム,墓地,ゴルフ場などを認知した生徒はルートの同定率が高く、約80%であるが、環境事物を多く認知していても、それが足下の植物,岩,土壌,雪などに限定される生徒では、同定率は大へん低く、約10%である。また、カラー空中写真上でのルートの同定率は市街地周辺部では高いが、山間部では低く、地形図上での同定率は、市街地周辺部ではカラー空中写真の場合より低いが、山間部では、カラー空中写真の場合よりも高い。
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