研究概要 |
旧石器遺跡における炉床の決定法を開発するために, 床面土壌の磁気的性質の違いに注目して, 1.モデル実験, 2.弥生及び縄文遺跡の焼け土及びその周囲の土壌試料の磁気的性質の測定, 及び3.1, 2に基づく旧石器遺跡での炉床位置の推定を行なった. その結果, 受熱した土壌試料は, 磁化強度が大きく, その磁化は安定であること, さらに試料間での磁化方向の集中度が増すことが明らかとなった. また, これらの磁気的性質の違いに注目すれば, 旧石器遺跡において, ある程度炉床位置を推定できることが明らかになった. 1.神戸大学農学部附属農場敷地内において, 約10時間のたき火実験を行なった. その結果, たき火中心の表面で約400°C, 表面下5cmで約100°C, 同じく10cmで約90°Cの温度上昇がみられた. 受熱した土壌試料の磁化は, 受熱していない試料に比べ, 磁化強度が大きく, かつ磁化が安定していること, さらに試料間の磁化方向の集中度が良いことが明らかとなった. さらに土壌試料の熱磁気分析の結果, 土壌中の磁性鉱物は, 水酸化鉄から酸化鉄へと化学変化することが明らかとなった. この化学変化によって磁気的性質の違いがもたらされていると考えられる. 弥生時代の兵庫県玉津田中遺跡及び縄文時代の大分県市ノ久保遺跡において, 肉眼で判別できる炉床及びその周囲の土壌試料について磁気的性質の違いを調べた. 炉床より得た土壌試料は周囲のそれに比べ明らかに磁化強度が強く, かつ磁化は安定であった. 3.1, 2の結果に基づいて, 山形県お仲間林, 静岡県柳沢C, 岐阜県日野, 滋賀県赤野井, 京都府高倉宮・曇華院V, 大阪不南花田, 大阪府はさみれ, 兵庫県国領, 広島県西ガガラ山及び長崎県百花台東遺跡において, 炉床位置の推定をした. その結果, お仲間林, 赤野井, 高倉宮, 曇華院V, 国領の各遺跡より, 明瞭に磁気的性質の違う土壌試料を見い出し, その地点がかつての炉床と推定した.
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