研究概要 |
本研究はフェムト秒領域の大出力超短光パルスを安定に発生するレーザー装置の試作研究である。試作装置の設計の最大の特長は、CWモードロック色素レーザーの超短光パルス出力をQスイッチYAGレーザーの2倍波を使って増幅する従来の方式に変えて、QスイッチYAGレーザーの代りにモードロック色素レーザーと同期したモードロックYAGレーザーを用いる方式を採用することにより出力の安定化を計っている点にある。研究実施計画に従って以下の通りに試作研究を実行した。 (1)「モードロックYAGレーザーの単一パルス切出し」既設のKuizenga型モードロックYAGレーザーの高出力部パルス列からポッケルセルを用いて単一パルスを切り出した。パルス幅100ps程度の約2μJのパルス(波長1.06μm)を得た。出力は当初計画の約20%であるが安定度は良好であった。 (2)「モードロックYAGレーザーの単一パルスの増幅」既設のYAGレーザー増幅器2段を改造し、初段増幅器を光パルスが2回通過(往復)した後に第2段に入射する配置を採用して実質的に3段増幅を行った。増幅器1段の追加はとりやめた。その結果増幅率5000倍,1.06μmの基本波出力約10mJ0.53μmの2倍波出力約5mJ(パルス幅〜5aps)を得た。出力安定度は約土5%程度で良好であった。モードロック色素レーザーとの同期も確認できた。(3)「色素増幅器の製作」(2)で得たYAGレーザーの2倍波で励起する3段の色素増幅器を製作した。前2段は横励起型,第3段は縦励起型とした。 (4)「パルス圧縮器の製作」単一モードに光ファイバーと回折格子(及び直角プリズム)を用いたパルス圧縮器を試作した。 尚、(3),(4)については調整及び特性試験を続行中であり、引続き装置全体の組立て,調整,試験を行なう予定である。当初目標の性能はほぼ達成できる見通しである。
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