研究概要 |
不対電子を有する化学種の検出, 同定にはESR観測が最適であるが, その定量性に問題がある. 我々はESRの利点を生かし, その定量性を向上させる目的でスペクトラムアナライザー(スペアナ)を使った二三のESR装置を試作し, その定量性を検討した. 合わせて定量性と深い関係のある試料挿入部の開発をも検討した. 以前に我々は試料挿入部から反射してきたマイクロ波信号を直接マイクロ波スペアナで解析し, その有効性を示したがS/Nに問題があった. 本研究では, 1.ヘテロダイン方式でマイクロ波信号を一度中間周波数(30MHz)に低下した後, 精密にESRによる側帯波(100KHz)を解析する方法;2.マイクロ波信号をホモダイン検波した後変調周波, その高調波をHFスペアナで解析する方法, を試作検討した. その結果, 1.前者では, 第一側帯波から積分型ESR信号が高感度で観測でき, ス ピン数の定量化(スピン磁化率)が容易である;2.積分型信号はESR信号のベクトル模型により理論的に説明できること;3.高次高調波も積分型で観測され, ESR線型に関する情報が得られること, が判明した. 他方, 後者では, 1.第1側帯波から1次微分型が, 第二高調波から二次微分型得られ, それらの信号の絶対量が直視できること;2.それぞれの強度および線型は, 入射信号のフーリェ展開の各係数として得られること;3.コンピューターと連結させれば, ESR信号強度, 線型(線巾), 位置(g-値), 超微細結合定数(hfcc)が解析的に得られること等が判明した. しかも感度は通常のESR縒りも良好であった. これ等の結果を基礎に, 生体関連錯体の構造, 電子状態, 酵素的機能(反応), 活性反応中間体の検出およびその構造についての知見を得ることを目的として上記装置の応用研究を行った.
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