研究概要 |
太陽系形成の過程においては, 原始太陽系星雲の冷却に伴って高温ガスから珪酸塩を主とする鉱物粒子の凝縮がおこり, これらの粒子の集積によって地球をはじめとする固体惑星や隕石が生成されたと考えられている. 高温での凝縮作用や蒸発作用といった固相-気相反応は, このような星雲における物質の化学的・鉱物学的な分化過程に大きな役割を果していると考えられる. しかしながら, このような反応に関する実験的な研究は, とくに凝縮作用に関して, ほとんどおこなわれてこなかった. 本研究では, 上記のような未開発の実験分野を開拓するという精神のもとに, 原始太陽系星雲に近い条件での鉱物の蒸発・凝縮作用を実験的におこなうための装置を試作し, これに成功した. 第一年度は真空蒸発凝縮炉(アユミ工業製:EC300)を製作し, その性能のチェックをおこなった. 本装置の最大の特徴は, 試料室が大きく多量の試料(数百mg以上)を取り扱えるところにある. 当初, この大容量の試料室を加熱するためのヒーター部に事故が発生した. 第二年度は, このヒーター部の改良をおこなうとともに, 蒸発凝縮実験をおこない, いくつかの成果を挙げることができる. 実験は, 単純かつ天然を代表するMg_2SiO_4-H_2系を用いておこない, 凝縮のおこる実験条件を明らかにした. 本装置では多量の試料を取り扱えることから, 生成条件の良くわかった凝縮物の評価(相の同定, 微細組織の観察, 化学分析など)が正確かつ容易におこなえるようになった. 今回の実験では, 凝縮は基本的に温度に依存し, またVLS機構によるフォルステライト・ウィスカーの凝縮もおこることが明らかにされた. さらに, 多量の試料を取り扱えるため, 微量元素や同位体組成の分析も容易になる. 今後, 本装置を用いて実験を進めていくことにより, 原始太陽系での凝縮作用の解明に大きな貢献がなされるものと確信される.
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