研究概要 |
本研究では, 従来の電界放出電子銃(FEG)にみられた種々の欠点を補うために, FEGの陰極チップー第1陽極空間のダイオード領域に磁界を重畳した磁界重畳型低加速FEGを開発し, その電子光学的特性の計算と測定を行った. その結果は以下のようにまとめられる. ただし, 陰極チップー第1陽極間電圧をV_1, 陰極チップー第2陽極間電圧をV_2, ダイオード領域に重畳される有効磁界に対応するアンペア回数をNIとする. 1.磁界を重畳したダイオード領域の電子光学的一次特性(焦点特性)は, 励磁パラメータk≡NI/√V_1によってほぼ-義的にに決まる. 2.磁界重畳によるダイオード領域の電子線のangukar confinementの改善の様子を, 定量的に明らかにした. 3.ダイオード領域への磁界重畳により, 第1-第2陽極空間の加・減速レンズ界に対して, 光源位置を任意にコントロールできることを明らかにした. このことは, 電圧比V_2/V1を変化させる必要がある場合に, 加・減速レンズ界の特性が大きく変化してしまう不便さを解消できることを示している. 4.磁界を重畳することにより, 放出電子流の利用高率を向上できること, 特に, FEGよりビームを平行出射させて, FEGから取り出し得るビーム電流を大幅に増加できることがわかった. 5.最大のビーム電流を得るには, 励磁パラメータに最適値が存在刷ることを明らかにし, これを電圧比V_2/V_1の関数として具体的に明らかにした. 6.ダイオード領域ならびに加・減速レンズ界の球面収差係数が, 重畳磁界の関数としてどのように変化するかを明らかにした. 7.磁界重畳型FEGをprobe forming systemに応用した場合に, どの程度のプローブ電流でどの程度のプローブ径が得られるかを, FEGの種々の動作条件において定量的に明らかにした.
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